長野県側の乗鞍エコーラインと、岐阜県側の乗鞍スカイラインを利用したのは10年ほど前。海抜2702m地点を通る道は、日本最高所山岳道路というのがキャッチフレーズだった。天気は、大当たりの快晴。乗鞍岳の剣ヶ峰 3180mは天空の中にクックリ浮かび上がって見えた。
北アルプスの槍ケ岳 3026m、前穂高岳 3090mなどの連なる連峰も絵に描いたような山に見えた。道路のテッペンとなる畳平の2702mに大駐車場があったが、快晴が呼び込むマイカーを処理できる能力はないようだ。駐車場に入る車の捌きがうまくいかず大渋滞。1時間半ほどで100m動くのがせいいっぱい。
車の隊列は数キロも続き、エンジンかけっ放しの車が出す排気ガスは、澄み切った天空には似合わないように感じた。車で通過できたことはありがたいことだったが、車の排気ガス等による環境汚染は、当時気になった。
中部山岳国立公園にあるこの道路が、2003年に環境保全のため通行規制を実現しました。マイカーの乗り入れの禁止、低公害のシャトルバス運行などです。地球温暖化防止対策の一環として、車での利用者には不便とはなるが、こういう対策がなされることは子孫に対する当然の責務だと思う。
この9月、長野県側から低公害と大きく表示したシャトルバスに乗った。前回と同じく快晴。乗鞍岳も北アルプスもクッキリ見えた。東京の早朝、永田町の高層ホテルから眺望する富士山は、クッキリ見える。しかし、車が動き出す時間になると、スモッグでボンヤリの富士山に変る。乗鞍岳は、規制によるスモッグ減少効果もあると感じる。
北海道弟子屈町にある透明度の高い摩周湖、私は2回訪ねている。快晴の中での湖面の青は、言葉で表現しずらい感動する色彩だった。北海道の大自然の中では、いつまでも見ることのできる当たり前のこと、と思っていた。しかし、観光客80万人が乗り付ける車の台数15万台。長い将来を見据えると、排気ガス等の環境汚染は心配です。
このたび新聞に、環境保全に取り組む弟子屈町を、北海道運輸局が支援する記事がでた。摩周湖の車両乗り入れを規制し、代替としてハイブリットバスやロープウエーを考えてみようというものらしい。実現するかどうかは不明だが、子孫の代の環境保全のために動き出したことはうれしい。
環境汚染は目に見えない。「塵も積もれば山となる」と同じだ。知床の世界遺産登録が、ヒグマとの共生を始めとする環境保全の改善意識向上に効果を与えている。さまざまな地域で、環境保全運動が高まることは、私たち一人一人の財産価値を高めることになる。
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