■こだわりのそばに「声も出ず」
仲間三人で、素人でこだわりのそばを打つ人を訪ねる機会を得た。私たちは、「長田式手打ちそば」にはかなわないだろうという軽い気分でいた。時は平成六年二月四日、東京生粉打会(きこうちかい)理事の勝崎捷二先生(共同通信社・函館支局長)の住いは、函館市内の繁華街・五稜郭のマンション。部屋に案内されて私たちはまずはビックリした。二月といえば厳寒、しかし部屋のストーブに火がついていないではないか。どうしてだろう。
師いわく、そばは全てが生きものだという。従って、そば粉、そばのタレ、手打ち道具等一切のものは、温度を一定にしておくのが大切だという。勿論、そばを打つ場所も暖かい所は不適だという。まずはボクシングに例えるとカウンターパンチを食った気分になった。
作り方は、生粉打そば。十割のそば粉を冷たい水で打つ。お湯を使うと打ち易いが、香りが吹っ飛んでしまうという。打ち上がった麺をみてビックリ、何とそうめんより細いではないか、しかも短くてきれていない。茹でる場面でまたビックり、僅か十秒間茹でただけで水洗いをし、氷水にサッと入れて締め、出来上がりとなった。試食で更にビックリ、極細な麺なのにこしがある。タレも本返し六ヶ月のつゆを使ってブレンドしたもの。なるほど旨い。「こだわりそば」に私たちは感動しました。
かくして、勝崎先生から私たちの講師となることを二つ返事で了解していただき、ルンルン気分で帰路についた。
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