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左手が小間板 「裁ちそば」は伝統文化
数年前、福島県・桧枝岐村で「裁ちさば」名人芸を見た。名人は、70歳を超えたおばあちゃ
ん。かつては、この地方の生活に欠かせなかったそば打ち、「そばを打てなきゃお嫁にいけな
い」と言われた時代もあったという。
短くて太いのし棒。練ったそばを小分けにしたものを延ばすためだという。重くて太い棒は、
簡単にそば生地を大きくする。知恵棒に見えた。たたみ無しのそば5枚をつくり、これを二つに
分割して10枚にし、重ねる。何枚つくってもても、耳がそろう大きさ等分、これが名人のなせる
技なのでしょう。
包丁も普通と違う。長方形の細長い包丁。たたみ無しの10枚のそばを重ねたものを、小間
板を使わずスイスイ切る。ちょうど布生地を裁つような感じ、これが語源なんでしょう。
ここでは、切ると同時に、そばを小分けして紙にくるんだ。乾燥を防ぐためなのでしょう。
裁ちそばの知恵は、「そば粉100%の生地は、たためば切れてしまう」、これを解決すること
から生まれたのでしよう。
私が訪ねた南会津地方の、舘岩村でも見かけた。打ち手の主流が70〜80歳という高齢。
そこで「舘岩そば塾」を開催して継承を試みている。しかし、体で憶えなければならないので、
簡単に育成できるものではないと思うが、地方に伝わる「伝統文化」を末長く守り続けてほし
い。
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