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◎「義理より心」気兼ねなくに挑戦



  景気が良い時には、冠婚葬祭などの交際費の額、大きくなる傾向になります。しかし、景気が悪くなり、額を小さくしょうと思っても、義理などがあり難儀なことです。今のような長びく景気低迷の時代は、この負担・生活を圧迫していることが心配です。

  大野町でも以前から、町・町内会連合会・教育委員会の三者による「新生活運動」を進めています。「ご出産おめでとうございます。お健やかなご成長をお祈り申し上げます」「ご全快をお祈り申し上げます」、いずれにも・「新生活運動によりお返しはしないでください」と書かれたカードを役場窓口に用意しています。これを、お見舞いやお祝いをするときに渡す方式です。

時代を先取りしたこの方式を検討実現にこぎつけた先輩に敬意を表します。しかし、さりげなく・やんわりのこのお願い方式も、各家庭のしきたりや事情により利活用浸透はイマイチの感じがします。長く続いている習慣を変えるということは大変なことだとつくづく感じます。

  こういう時代の中にあって、岩手県・藤沢町が、町自治協議会・町女性組織連絡会議・町老人クラブ連合会などの協力を得て、生活合理化運動の一環として 「お見舞い返礼の簡素化」 に取り組み始めました。全国各地で挑戦し・結果を出せない悩みをかかえているものに、朗報が届くことを祈ります

  取り決め事項は、@ 見舞金は3千円以内。品物は使わない。A 退院報告は、電話かハガキとする。快気祝いの返しはしない。B 入院が7日以内の場合は、見舞いをしない。C 同じ人が同科系の病気で再入院した時は、見舞いしない。D 親せきは別扱いとする。

  入院中からお見舞い返しを心配したり、病みあがりの返礼訪問を苦にしたり、などなど・・・・・・当事者の心の負担も少なくない。この制度は4月から実施、「多くの町民の願い」ではあるが、まだ浸透するまでに至っていないよう。

藤沢町の広報に「簡素化実現」に奮闘する4人の方の考え方が載っています。紹介しますので、私たちも考えてみましょう。


 
  「まず一人ひとりの意識改革必要」 自治会協議会長 小野寺恒雄 さん (59歳)

  生活の合理化は、これまで何度となく実施してきましたが、いずれも全町的な普及には結びつかないままつぶれてしまう・・・・その繰り返しでした。町自治協議会では、今回の取り組みが全町に浸透するようすべての自治会に働きかけており、これまで多くの自治会で決議を得ています。

  長引く景気の低迷や少子高齢化が進んだ今、若い働き盛りの世代がいない家庭も多く、互いの負担を減らすことで暮らしやすい地域をつくることが、以前にも増して重要な時代を迎えています。全町的な取り組みを実現するためには、まずは一人ひとりの意識が大事。「自分だけなら」という考えは改め、みんなでルールを守りましょう。


  「相手の気持ちを気遣うやさしさ」 女性組織連絡会議会長 須藤千代子 さん (69歳)

  「お見舞い返し」が負担で、わざわざ遠くの病院に入院したり、一人暮らしのお年寄りの中には、タクシーで一軒一軒「お見舞い返し」をする人もいるそうです。このような話を耳にしたとき「これではいけない」と強く思いました。お見舞いは、「心」をお金やモノにかえて遣(つか)うものです。その善意を返したいがために、病みあがりの体で返礼に出かけているのです。

  お見舞いを遣う人は、返礼を受ける人でもあります。お見舞いを遣う際、一番大事なことは、退院後にその人の負担にならないような気遣いをすることではないでしょうか。遣う側も遣われる側も互いに相手を気遣う本当の意味でのやさしさが必要だと思います。



  「お金やモノより大切な信頼関係」 元青年団体協議会会長 伊東賢一 さん (49歳)

  昭和51年に結婚しました。披露宴は、仲間が実行委員会を組織して企画、自治センターで行いました。いわゆる公民館結婚式と呼ばれたスタイルです。豪華さや派手さはなくても、そこに集まった人たちの心が伝われば、すばらしい結婚式になるということを身をもって体験しました。

  お見舞いやお見舞い返しも同様で、金額の大小や品物の中身ではないと思います。大切なのは、互いを気遣い思いやる助け合いの精神。お見舞い返しが負担になるようでは、本当の気遣いとは言えません。人は心や信頼関係で結ばれています。まずは、お金やモノより大切な地域のきずなやつながりを深めることから始めてはどうでしょうか。


 
  「簡素化は手段で目的は負担軽減」 第29区自治会長 菅原文男 さん (56歳)

  第29区自治会は41世帯です。8年前から「自治会内のお見舞いは一律3千円。お見舞い返しはタオル一本」というルールをみんなで守り、実行しています。簡素化を始めたきっかけは、総会や役員会の席で「互いに負担を軽くしよう」という声が多かったからです。特に一人暮らしや高齢世帯にとっては、返礼に歩くのもかなりの負担。病気を気遣うお見舞いが、逆に負担をかけてしまっては元も子もありません。

  地域は互いに助け合って成り立っています。簡素化はそれ自体目的ではなく、負担を軽減するための手段。今回全町で基準を定めたことはとてもよいことだと思います。気兼ねなく暮らせる地域が、何より一番大切なのですから。

 
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