今年はホタルの飛び交う姿が、例年より多かったと農家の人はいう。水田の防除、空中散布を取りやめたことだろうか。それとも、作物全般に対する減農薬の浸透だろうか。いずれにしても、小動物が復活してくることは、小川がきれいになった証であり嬉しいことです。
昔は、家の前の川がきれいだった。市場へ出す野菜もこの川で洗っていた。その川にはフナ草(水草)がはりつき・ちいさな虫がいっぱいついていた。この草虫は、家で飼う金魚のエサとした。どじょうはもちろんのこと、フナやとうぎょが川でスイスイ遊び、小さなツブがいて結構大きなカニもいた。さまざまな光景が頭に焼き付いている。
大野町内では、地域用水路の改修や農業基盤整備の計画があります。「優良農地をつくり整備する」ことや「守る」ことはとても大切なことです。農業投資は、こと農業者だけに便宜を与えるものではなく、さまざまな形で住民に「多面的機能」の恩恵を与えています。
このような状況の中、国の政策は環境保全に理解を示すことが多くなったことを、肌で感じるのは私だけではないと思います。読売新聞に「農村の資源保全」について支援する政策、農政改革「中間報告」の記事が。昔の記憶を思い返し、未来に提供する農村原風景を考えてみませんか。
農村の「資源保全」 集落で支えきれない水路や農地・国民の利益とみなし国費で支援
読売新聞 2004・8・13
農地や農業水路の管理を国が支援する政策が、農政改革の「中間報告」に盛り込まれた。解説部 渡辺 亮
全国で、区画整備の終わった水田は全体の60%にあたる157万ヘクタール。基幹となる農業水路の総延長は約4万5千キロメートルに上る。
国が整備してきたこれらの農地や農業水路の維持が困難になると危惧(きぐ)されている。水路わきの草刈りや泥上げといった保全管理の作業は、これまで農村の集落が自らの力で行ってきた。だが、農村でも非農家世帯が増え、農家は高齢化、集落としての機能が著しく低下しているというのだ。
こうした状況の中、担い手となる大規模農家に農地を集中させると、一部の農家の負担が大きくなりすぎて、「保全管理の質の低下が懸念される」と農水省は説明する。
農政改革の方向性を議論している同省の食料・農業・農村政策審議会が10日にまとめた「中間報告」で、この問題は「資源保全施策」として取り上げられた。
農地や農業水路の保全管理を農家だけの負担とせず、国が面倒を見ようというものだ。農家だけでなく、地域住民も含めて協議会を作り、保全管理の計画を盛り込んだ協定を結べば、国費で支援するという。
中間報告には、「整備から保全管理に移行」とも明記され、農業の公共政策が転換期を迎えているとも受け取られる。今回の農政改革の中では、担い手農家を対象とした直接支払い制度の導入、農地制度の見直し、環境保全に取り組む農家への支援策と並んで、新政策の柱の一つに位置づけられている。
だが、直接の受益者は農家なのに、税金で支えなければならないのだろうか。この点について、同審議会は、洪水を防ぐなどの国土保全、水田や水路が作り出す自然環境、農村の景観といった、いわゆる「多面的機能」によって、国民全体が利益を受けているという見方を示している。
とはいえ、農地ならすべてに「多面的機能」が備わっていると言えない。長年にわたって効率重視で整備してきたのは、コンクリートで覆われた生物のいない水路でなかったか。
中間報告を受けて、モデル事業の実施に取り組むことになる農水省は「一から十まで税金で支援するのではなく、農家だけの便益と、国民が受ける便益がそれぞれどの程度か、線引きを考えなければならない」と、課題を挙げる。
この政策が生まれた背景には、国の支援を担い手農家に集中させる農政に転換することで、小規模農家が大多数を占めている農村が疲弊してしまうのではとの懸念もあった。小田切徳美・東大助教授は「担い手農家を重視する産業政策は横糸」と解説する。
農村をどのような形で維持していくのか。「多面的機能」という響きのいい言葉に頼るだけでなく、都市の住民に対しても、正面から問いかけていくべき問題だ。
今年度の農業関連の公共事業予算は約8300億円。予算が削減される分を「保全管理」という名目に変えて確保しようとしているだけと受け取られないためにも、この政策でどのような農村の未来を描こうとしているのか、明確な青写真が必要だ。
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