◎人間の五感と森林・木の話 連載7 農学博士・梶本孝博さん
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「人間の五感」のつづき 森づくりによる町づくり
私どもの身体の中には古い時代から血の流れているものがあり、それは森、木、こういうものが自分たちの周りにあると、本当に身体が反応してリラックスします。30分歩くだけで、血糖値が下がっても糖尿に非常に良い。そのぐらい、森には我々にとって良いもの。食べるもの色々なもの、大事なもの、があります。これが森であり木であります。
町長がおっしゃったように森づくりで町づくりをすることは、この時代に合った町づくりの方法だと心から思います。山づくりは三代ですから、簡単にはできませんが、我々の子ども、孫の時代に、「おじいちゃん、おばあちゃんが本当に良いことをしてくれた」、「この木、この山はおじいちゃんが作ってくれたんだ」、と言ってくれるような努力をしなければいけません。
きじひき山がどうして坊主になったのか。牛を放したんでしょ。牛を放すために切ったのでしょう。ヨーロッパの文明は、家畜文明、山を坊主にする。森林を切らなければ、生活ができないのがヨーロッパ文明であります。
我々、日本人の文明は違います。森とともに、自然とともにあり、そのことが最も自分たちの心と身体にフィットしている。和んでいます。我々は、できるだけこのような環境を作り上げていかなければなりません。
中標津町、豊富町、雄武町など、道東オホーツクの非常に条件の厳しいところがあります。昔は真っ青っ赤なトマトが採れた、赤い美味しいスイカも採れた。しかし、今は採れない。気温が下がっているからではありません。気温は同じだが、木がなくなり、風邪が吹いて、気温が下がって、生り物がならなくなった。
もっと木があって、日だまりができている時は、スイカもトマトも真っ赤になってくれました。そういうところを作るには時間がかかります。木とか林とか森というのは、私たちの生活の質の向上に連動しているのであります。
木を切らなければもっと豊かな生活環境になっていたはずでありますが、人間はそのことに気がついてないのであります。
今、私が申し上げたことも一つの参考に、森や木が持っている良さはどういうことか、もっと興味を持っていただいて、是非、町長とご一緒に森づくりをしていただければ、こんな嬉しいことはありません。
大変長い間お話をいたしましたけれども、時間になりましたので、これで終わらせていただきます。本当にご静聴ありがとうございました。
平成17年2月2日・午後6時から7時まで、大野町中央公民館で 「大野町森づくり講演会」 で話されたものです。
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