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◎痴呆は人生の終わりではない「双方が被害者」



  「双方が被害者になる」  クリスティーン・ブライデン さんの講演から

  痴呆症の診断を受けた家族のショックはさまざまで、トラウマへの反応のしかたもいろいろあります。たとえば、診断された本人の将来がダメになることだけを悩むケースもあると思いますし、痴呆症本人の世界が崩壊して本人と家族とが共に被害者に陥ってしまうケースもあります。

  私が痴呆症と診断された時、一番下の末娘はまだ9歳でした。当然、痴呆症の意味もわかりませんでしたし、そのようなトラウマと関わっていくだけの感情の幅といったものが彼女にはまだ育ってきていませんでした。その結果、末娘は自虐的になり、麻薬を吸って13歳で不登校になりました。現在18歳になろうとしていますが、まだ在学中です。

  その娘の言葉です。「自分の世界は終わった、と思いました。恐れなのか何なのか、自分の気持ちがわからなくなったし、痴呆症についてもよく知らなかったので、これから先どうしていくのかわかりませんでした。最初は痴呆症の診断に対してどうしていくかわからず、ぐれてしまいました」。

  しかし、情報と愛情があったおかげで、痴呆症の診断と向き合う戦略が少しずつ育ってきました。末娘の場合はちょうど思春期だったので、何年かかかってその向き合い方を作っていったわけですが、今、その彼女はこんな風に言っています。

  「お母さんが悪くなっていくのを見るのはつらいけど、まだ同じお母さんだし、私もお母さんを大好きなのだということがわかりました。それで私はもう一度やる気になり、絶対にお母さんと大切な関係でいたいと思うようになりました。それが一番大切だと思います」。

  その彼女は自分を被害者としてみていた状況から、今度は私のそばにいてケア・パートナーになってくれ、今のあるがままの私とこれから変わっていくだろう私を受け入れ、愛してくれているのです。

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