3年前の5月18日は、日曜日で八郎沼まつりでした。正午すぎ、会場にいた私の携帯電話が鳴った。標高600メートルのきじひき高原(大野牧場)から森町の山に入山した女性が、行方不明との内容。今でもしっかり覚えている。
天候が悪く捜索は難航、自衛隊も出動した大掛かりな捜索にもかかわらず、3日目の午後1時過ぎ、残念な姿で発見された。当時48歳という人生半ばの方であり、家族はさぞ無念だったろうと思います。
このような事故の再発防止のために、「大野町遭難対策に関する実施要綱」と「大野町遭難対策に関する実施要綱取扱要領」を作りました。同時に、タケノコ採りの時節が終わるまで、大野牧場の入山門扉を閉鎖。更に、啓発看板を立てた。結果、その後山菜採り行方不明事故はない。
5月23日の新聞に、芦別市では山菜採りの67歳男性が死亡で発見。遠軽町では、73歳の女性が行方不明、という記事が。捜索費用請求には賛否両論がある、しかし命を助ける手段として止む終えないと思っている。
5月9日の北海道新聞に、「低いモラル 請求は当然」 「危険軽視の行動に警鐘」という記事が載った。山菜採りの行方不明対策については、どこの町も頭を痛めているようです。
記者の視点 「山菜採り遭難の救助費用」 岩内支局 平岡 伸志
山菜の季節を迎えたが、道内の自治体では、山菜採りや山歩きで遭難した場合に捜索・救助費用の一部を当事者に請求する動きが広まっている。
毎年、体力や装備が不十分なまま遭難するケースが後を絶たず、自治体の大きな負担となっているからだ。昨年、道内で山菜採りによる死亡者は17人と、この5年間で最悪を記録。今年も既に死者が出ている。救助費用の請求は、危険への備えを軽視した愛好者に対する警鐘とも言え、一人一人の責任ある行動が問われている。
「危険を軽視した無謀な入山を防ぐには、強い姿勢を取らざるを得ない」。4月、隣接する後志管内寿都町、黒松内町と共に「山菜採り遭難事故等防止要綱」を定め、救助された人やその家族に費用の一部を請求することを決めた島牧村の藤田章村長は強調する。
同村などが徴収するのは、初期捜索後の救助活動費のうち、山岳会メンバーなど民間人の人件費のほか、役場職員、消防団員を含めた捜索隊員の食費など。同村によると、百人規模の捜索で一日当たり35万円前後になるという。既に制度化した留萌管内増毛町や渡島管内大野町など4町と同様、自己責任を明確にし、遭難抑止を狙っている。
寿都・黒松内・島牧の三町村にまたがる月越峠はタケノコの名所として人気が高い。行方不明者の捜索活動は、島牧村がもっとも多く、年間10件前後に上る。警察、消防と共に、役場職員60人のうち10〜20人が出動する。捜索が長引いた結果、通常の業務を「土曜、日曜返上で片付ける」(同村・総務課)事態も珍しくないという。
同村は人口2千人余りで自主財源に乏しく、財政事情は厳しい。歳入の6割を占める地方交付税が減額される中、本年度の一般会計予算22億円のうち、村税収入はわずか1億1千万円。これに対して、昨年の救助費は初期捜索費を含め130万円。1995年には約600万円に上った。
救助活動を取材した経験から言えば、入山者のわずかな注意で遭難を防げたケースも多い。雨や寒さをしのぐ装備や非常食を持っていなかったり、グループで入山しながら別行動して奥地に迷い込んだり、持病があるのに入山した高齢者の例などだ。
捜索に当たる警察職員などから「救助のヘリコプターに見つかるまいと身を隠す」「最後まで袋いっぱいの山菜を手放さず、駆けつけた捜索隊に「助けを呼んだ覚えはない」とうそぶくなどの話を聞くと正直あきれてしまう。
こうした一部入山者のモラルの低さを考えると、救助費用の一部を当事者が負担するのは当然ではないか。滋味あふれる山菜は食卓に彩りを添えてくれるが生命の危険や、大がかりな救助活動と引き換えになるはずもない。愛好者にはもう一度、安全への自覚を促したい。
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