「地域活性化」という言葉、行政ではずいぶん使ってきた。でも、成果となれば?がつくのかも。この原因は、行政が考えたことをプログラム化して押し付けたことかも知れない。自治体も収入が減り、あれもこれもやれる時代ではなくなりました。これからは、住民が企画提案し、少ないお金を有効に活用することが求められています。
そば好きの私は、数年前に山形県・金山町にある「谷口がっこそば」を訪ねた。山あいの小集落(36戸)・谷口地区にあり、平成8年まで金山小学校・谷口分校だった。少子化等の影響で110年の歴史に幕を降ろしたという。
「愛着ある校舎を壊したくない」、という卒業生や、これを応援してくれる人が現れた。平成9年に、農業体験学校「四季の学校・谷口」を開設。同時に、手打ちそば屋「谷口がっこそば」を開店した。
今年の「春の学校」の案内を見ると、「自遊自学=自ら積極的に遊び、自ら学ぶ」が基本。授業内容は、「環境整備」=校舎修繕・花壇整備、「田畑整備」=竹林整備・茸の植菌、「田舎遊び」=山菜採り、「大交流会」=餅つき・旬の田舎料理となっている。現代の富裕生活で忘れかけている「昔の生活のよさ、これを体験させてくれる内容になっている。
「冬の学校」では、校舎の雪下ろし・かまくら作り・ハム作り・地酒の試飲・スキー・スノーモービルなど、大人も子供も楽しめるメニューは魅力があります。
物珍しさだけであれば、すぐに途絶えてしまう。「おれたちの分校を残そう」、という地域が一致団結しての取り組みが、四季の学校を33回続けさせている原因ではないでしょうか。
「谷口がっこそば」は、地元の加藤トキ子さんが中心となり運営している。講堂がお店になっていて、薪ストーブ・黒板・卒業作品・書棚・などなつかしいものが置かれていて、郷愁をさそります。隣の製粉所で挽いたそば粉を使い、地元の人が打つ「手打ち蕎麦」は、私の舌と心にはここちよい味が残る。
そばがき(かいもち)を油で揚げたものに塩をまぶした「揚げそば」など、地域で育った逸品。キュウリを砂糖で煮つめた郷土料理などを、そばといっしょに振舞うことは、地域の人情豊かな心が伝わってくる。
お客との会話は家族的です。加藤トキ子さんは、通称「名物母ちゃん」と呼ばれ親しまれています。「うまいそばはどこにでもあるさ。ここでは、スタッフの心をゆっくり味わってほしい」、という言葉が、繁昌の源となっているように思える。
金山町の谷口地区のみなさんから、「地域の発展は自らの手で行うべし」を教えられる。私はすでに3回訪問している。機会をみて又行くつもりです。魅力は、飾らない人柄で「懸命に地域を守ろうとするきずな」です。
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