温泉旅館ブームも一段落?。勝ち組、負け組みのハッキリする商売。生き残り、そして代々続けることは至難のことのようです。
こういう中、湯布院温泉や黒川温泉の繁昌が続く。全国から視察が殺到したというが、その効果があちこちで出ているのだろうか。
黒川温泉・山みず木の主人は、露天風呂作りの天才と呼ばれている。この人の話は、温泉旅館以外の業種にも通じます。いっしょに勉強してみましょうか。
「温泉旅館はかくあるべき」 黒川温泉(熊本県) 山みず木 代表 後藤 哲也
都会の人は、例えば黒川なら黒川らしさを体験しに来る。黒川は、山の中の田舎の村。田舎の雰囲気がないといけない。お客さんを本当に感動させるには、一軒の旅館だけよくてもだめで、地域全体で統一感のある雰囲気作りをしないといかんのです。
僕は、植林された杉林が広がっていた黒川のまわりの山に、雑木を植えるところから始めました。そして、地域全体の雰囲気を作るため、反対する旅館を一軒一軒説得して、建物の外壁をくすんだ黒で統一しました。それで黒川には人が来るようになったんです。
作りものに見えては絶対いけない。静かな村に一軒でも大きなホテルが出来ると、それだけで雰囲気は壊れてしまう。地域全体で環境を守ることが大切なんです。
どこにでも当てはまる正解はありません。ほかがやってることを真似るのではなく、その土地ならではの雰囲気を作ること。その土地にお客さんが何を求めて来るのか、真剣に考えること。その土地ならではの個性が重要なのです。
僕に言わせれば、日本の温泉旅館の邪魔をしているのは「建築基準法」と「旅行代理店」です。建築基準法のせいで、風情のある木造の建物を新たに建てることが、ほとんどできない。コンクリートの建物では、雰囲気のある観光地は作れません。建物の密集している都会も田舎も同じ条件というのはおかしい。これは観光地の雰囲気作りにとって大きな障害です。
旅行代理店は、旅館を商品のひとつとしか見ていない。ああしろ、こうしろ、といろいろ言う。お客を回してもらっているから、力のない、ほとんどの旅館は従わざるをえないんです。けれど、彼らの言う通り作っていたら、お客さんを感動させる旅館はできないんです。
それどころか、日本中どこへ行っても同じような旅館ばかりになってしまった。これでは都会の人がわざわざ訪ねて行く気にならんです。これは旅行代理店の責任だと、僕は考えています。
[後藤哲也さんのフロフィール]
1980年代半ば、黒川の大ブレイクを演出。
露天風呂作りの天才。
1903年国土交通省の「観光カリスマ」認定。
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