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◎ 「塩分ものともせず・マングローブ」 森の話1



  旧大野町は、海のない町でした。木は、陸地に育つものという先入観があります。ところが、熱帯や亜熱帯地域の海辺の遠浅には、マングローブ林という塩水をものともしない常緑樹があるんですね。高い山の植物を高山植物と総称するように、海水が満ちてくる河口に生える樹木をマングローブ林と呼んでいる。

  林には、100種類の樹木が生えているという。日本では、奄美諸島や沖縄でみることができる。一般の植物は、母樹から種が落ちて発芽するが、マングローブの場合、種が母樹についたまま発芽し、それが泥の中に落ちて成長する「胎生種子」という特殊な営みをしている。

  マングローブの林には、魚・エビ・カニなどの生き物がたくさん棲みついている。この理由は、陸の森林の落葉樹と同じく、マングローブ林の落葉が海底でバクテリアによって分解され、プランクトンに栄養を供給しているからだという。また、樹木からたくさんの虫が海に落下、これも餌になっている。

  樹木の多くは、小枝をタコの足のように海底に着けていることが、魚の恰好の棲みかとなっている。さらに、樹林が日光をさえぎり、水温上昇を防止する役目を果たしている。このように森は、自然界の大事な役割を担っている。

  このマングローブが、エビの養殖地になったりしてどんどん減少しているという。えりも岬の海岸の樹木も、家の建築や燃料に切り出され、伐採跡地から土砂流出でコンブが生育しなくなった。そして魚も獲れなくなった。この環境を回復させた努力は、並のことではなかった。

  森林を皆伐すると、自然環境は悪い方向に一変する。住んでいる住民、生息する動植物を守るためにも、皆伐は止めてほしい。森を元に復活させるには、百年単位の気の遠くなる努力が必要となることを、認識しなければならない。

  (森が消えれば海も死ぬ 松永勝彦・著  参照)

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