上甲 晃さん (じょうこう あきら)
・志ネットワーク代表
(経歴)
・昭和16年 大阪生まれ
・京都大学 卒業
・松下電器産業
・松下政経塾 塾頭
常務理事
副塾長
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きちんと暮すことが 生きる基本 志ネットワーク 上甲 晃・代表
(5回シリーズ)
*貧しい国の豊かな心に学ぶ
「もったいない」。そんな言葉を耳にタコが出来るぐらい教え込んでも、日本の子供たちには、ぴんとこない。仮に、言葉の意味を理解し、頭でわかったとしても、本当の意味が分からないだろう。
子供たちだけではない。大人たちもまた、日本では、「もったいない」といった言葉の本当の意味が分かっていないのではないか。物が有り余り、溢れかえるかえる中にいると、「もったいない」という言葉は、別世界、無縁の表現なのである。
*貧しい国で分かる「もったいない」の意味
私なども、湯船からお湯が溢れる温泉で、「あー 気持ち良い」との言葉が口から出ても、「もったいない」といった言葉はでない。物は少ないから、「もったいない」のであって、有り余っていると、「もったいない」とはとても思えないものである。
バングラデシュに出かけると、私たち日本人もまた、自然のうちに、「もったいない」と思えるのである。ホームスティ先で、顔を洗う時、川や池、あるいは井戸の水で洗うこが出来ない私たちは、ペットボトルの水に頼るしかない。
手持ちのペットボトルの数は限られている。それを考えると、両方の手のひらに貯めることの出来る水は、一滴もこぼせない。「あー もったいない」の言葉が、自然のうちに出てくるのである。
バングラデシュ・スタディツアーを始めて10年が経過した。この間、一年だけ、参加人数が少なくて、開催できなかった。しかし、残りの9年は、毎年、20人から30人の参加者と共に、バングラデシュに出かけた。
「どうしてそんな貧しい国に出かけるのか」としばしば聞かれた。過去10年間、日本からバングラデシュに観光に出かけた人など、ほとんど聞いたことがない。世界最貧国という不名誉なレッテルを貼られた国は、観光の対象になりえなかったし、誰も振り向きもしなかった。(次回へつづく)
志ネットワーク 63 2006年7月1日発行(季刊)から
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