日本の商売言葉に、「迎え三歩に見送り十歩」というのがあります。買い求めた客の姿が見えなくなるまで見送りなさいよ、このことがリピーターをつくる基本になるということの教えです。子孫代々店の伝統を受け継ぎ、百年を超える老舗もあり、みんなお客さんの対応に真心を込めてきた。北京にはもっと長い伝統の店があります。しかし、友誼商店などの国営の店に入ると、日本のような「お客様第一主義」とはほど遠い印象を受けます。
今回22年ぶりに北京を訪れたが、改善されて助かることもあった。以前は二重価格制度があり、「兌換券」という外国人専用の紙幣だった。外国人のお客の買い物は、北京市民より高く設定されていた。これが廃止されたということは、国の経済が成長したということでしょう。
日本とはまだ隔たりがあると思ったのは、接客態度です。大柵欄という昔の繁華街の大きな店に入った。まず品定めして決めますが、「いらっしゃいませ」的なあいそは一切無し。次に、買うと決めた品物の支払い書を受け取り、収款台(支払い所)に行きます。ここでも無表情な対応。支払いした領収書を持って最初の売り場に戻ると品物を渡してくれる。この品物を、手渡し出来ない距離がありました。そうしたら投げてよこしましたが、悪きがあってのことではなくこれが普通の対応のようです。。お茶屋さんなど数店入りましたが、応対は似たようなものでした。長年のしきたりですから、簡単に変えるわけにはいかないのでしょう。
イトーヨーカドーの塙専務(中国代表)が、あいさつについて話してくれた。「中国は、100%配給制度の国だったんです。国が全部面倒みてやるよ、こういうことなんです。配給制度が無くなったのは、今から15年ほど前です。今日は油の配給がありますよ、と言ったら、油の券とお金を持って行き、1キロ以上もある長い列に並んでやっともらえた。このことが小売業はあいさつをしなくていい企業だと思っていることの一因なんです。北京の華糖洋華堂では、入社の日は丸1日あいさつの訓練をするという。そこであいさつができない人は不採用。あいさつのできない人に教育してもだめだ」、言い切る。
私たちは、開店30分前の店の中を研修させていただいた。店内を回ると、どのコーナーでも「朝のあいさつ」で迎えてくれた。日本以上の立派な応対に戸惑ってしまいます。また、毎日開店時5分間だけ、あいさつをして店内に客を迎え入れるという。私たちも研修を受けたが、お客さんを気持ちよくさせて迎えるあいさつ、実践は簡単なようでむずかしいですね。
この華糖洋華堂の開店時出迎えあいさつ、あるお客様に「気持ち悪い」と言われた。その方に、「この頃あいさつ悪いね」と言われた。あいさつが全ての基本、ということが定着してきたと感じるという。長い間の慣習を一朝一夕に変えることは無理としても、「お客様から給料をいただいている」ということを絶対わすれてはならないと力説する。
標語にあります。「笑顔であいさつ 気持ちいい1日」、日本人に元気のよいあいさつは似合う。あいさつは、商売繁盛の基本、しいては自らにも利益をもたらす。老いも若きも、誠実な「あいさつ」心がけましょう。
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