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◎白川卿の世界遺産 「合掌造り守るつらさ」



  岐阜県白川村の合掌造り集落は、1995年12月にユネスコ世界文化遺産に登録されました。昔は、白山を源とする庄川の上流にあり、近年まで「陸の孤島」と呼ばれていた辺境。人の手なしでは維持できない合掌造り、そこでの生活を見るため訪ねた。

  石川県側の白山スーパー林道から車で入り、降り口を出ると白川郷。白川村には112軒の合掌造りが在り、そのうち白川郷・荻町地区には59軒集中している。観光客の入り込みも多い。平成17年のデータでは、日帰り客・1356千人、宿泊客・81千人。自動車での入り込み台数も10万を超えるという。

  展望台から眺めると、周りを山に囲まれた狭隘な空間に集落があることがわかる。合掌造りの屋根は、東西に分けている。渓谷を吹き抜ける強い風を、この屋根は緩和する役割を果たしているという。また、冬の雪を二つに割って落とし、雪が早く融ける工夫もされているという優れもの。

  ここには、「訪れる方へのお願い」という、観光客へのマナー発信があります。@ 「ゴミは捨てない、持ち込まない」。集落内にはゴミ箱は設置していない。ゴミはお持ち帰りをお願いします。A 「火気は厳禁」。合掌造りは火に弱いということで、指定した場所以外の喫煙や焚き火・花火はダメ。B 「自然を大切に」。集落に自生する植物の持ち帰りを禁止。C 「 私有地に入らないで下さい」。D  「トイレは決まった場所で」。E 「キャンプは厳禁」。という6つです。

  白川郷・荻町の集落で暮らす人は、観光に関連した仕事で生計を立てている人が多い。宿泊所経営、駐車場提供、お土産屋さん、食事処、文化財展覧 ・・・ 経営・販売・労働は相当な所得をもたらしている。しかし、観光に関わらない一般家庭にとっては、とても苦痛のようです。さきほどのお願い文書の始まりには、「世界遺産集落は実際に生活している集落です。住民のプライバシーを守って散策してください」、と書かれている。

C番の「私有地に入らないで下さい」には、「個人の敷地や田畑に入ったり、家の中を覗いたり、無断で戸を開けたりするのは絶対に止めてください。また、野菜、花、農作物等も大切に育てているものですから、絶対に採らないで下さい」、と念を押した注意が記されている。

  集落を歩いてみると、ロープを張ったりして自己防衛している家もあります。生活しているお年寄りの話では、観光客が多いため洗濯物を干すことに気兼ねしたり、家を覗かれないためのカーテン、家の周りの草取りや花を植えての環境整理、交通の渋滞などなど生活に支障や気遣いしなければならない悩みが沢山あるという。この悩みの現状、痛いほど分かる。

  観光で潤う陰に、神経をすり減らさなければならない生活や地域の為にガマンしなければならない現実が潜んでいることを、観光客となる私たちは認識しなければならない。

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