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◎白川郷世界遺産 「合掌造りの屋根を守る」



  飛騨の白川郷・荻集落を一望できる展望台に立つと、合掌造りの家が重なり合い、古の絵巻物の世界に引き込ませてくれる。60度という急勾配の屋根に、幾重にも敷き詰め・差し込まれた茅は、見事なまでのインパクトと印象を与えてくれる。

  昭和28年には、この白川村には264棟の合掌造りがあったという。昭和30年台に過疎化の波が押し寄せ、激減の一途をたどりだした。昭和42年には154棟に半減し、「守る」ことを真剣に考える運動に発展している。

  昭和46年に荻町集落が伝統的建造物群保存地区に選定されたのを機に、「荻町の自然環境を守る会」が発足し保存活動が始まりました。こういう努力が効を奏し、現在白川村には112軒の合掌造りが存在し、うち59軒は世界遺産に登録された白川郷に在る。

  わが家の近くには、僅かではあるが茅葺屋根の家や納屋が残っている。数年前傷んだ部分を補修したが、大変な苦労を強いられたという。ひとつは材料の茅です。遠く津軽海峡を渡る東北地方から調達したという。さらに修復できる茅職人も、東北地方で見つけお願いしたという。当然、費用は嵩んだことは明らかです。

荻町の合掌集落の茅葺きは、「結(ゆい)」という人々の応援の貸し借りでされてきたという。私の住む町の田植えも、機械化される前の手植え時代は「結」だった。合掌造りを持っている家は、茅を個々の家で刈り取り保存し、それを屋根の葺き替えの時に出し合った。労力もしかりであった。

屋根の葺き替えは40年に一度が基本だという。しかし、この「結」制度が危機を迎えている。茅を貯めることの出来る家が減少、「茅」も少なくなり希少価値がでてきた。さらに合掌造りの維持経費が嵩むようになったことも「結」制度の維持を困難にさせている。

  集落の北側に浄土真宗の明善寺がある。本堂・鐘楼門・庫裏、全ての屋根が茅葺きです。住職のお話によれば、「里で刈り取る茅は、茎の中に白いものが詰まっている。そういう茅はダメだ。それに比べ山にある茅は、茎の中が空洞になっている。これを使わなければ長持ちしない」。

そう言えば、父はよく茅のすだれを編んでいた。その茅の茎は空洞なので、シャボン玉の吹き筒にして遊んだ。また冬になると、大沼・小沼付近の湿地帯で刈り取った茅を、馬そりに積んで行き交う光景は忘れていない。昔はわが家の近くで調達できた茅も、良質だったのでしょう。


  合掌づくりの屋根、棟の部分の茅は水が垂直にあたり腐れやすく、毎年置き換えが必要だという。また、冬は屋根に雪が沢山積もる。その雪が落ちる時に、茅も一緒に引き抜き、屋根に窪みを作るという。この修復の「差茅」も随時必要だという。

  白川郷合掌集落保存基金などを活用しての保存活動、財源が不足のようです。明善寺の住職の説明では、「2年毎に葺き替えの棟数を決め、計画的に修復しているが、いろいろな事情により計画数の達成がままならない」と嘆く。ニュアンスから、所有者の負担も大きいのでしょう。

  文化的保存を必要とする価値ある財産、指定を受けたがために苦労しているケースをよく耳にする。こういう中で、地域が力を合わせて子孫代々の財産を守る努力と姿勢に驚きを感じます。北海道との歴史の差なのでしょうか。



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