白川郷に合掌造りの明善寺がある。泊まった民宿のすぐ近くなので見物するには最高、朝夕何回も眺めることができ運がよかった。本堂も鐘楼門も庫裡も、全て茅葺き屋根です。
鐘楼門の横で、風雪に勝ち抜いてきたという証の木肌をみせた「イチイ(おんこ)」の木が見物客を迎える。樹高 10.6メートル 目通し廻り 3.5メートル。案内板をみると「岐阜県重要文化財・天然記念物」と記されている。このイチイの木が明善寺の風格を一段と高め、歴史ある建物にしている。鎮守の森そのものです。
本堂は260年前に建立されたという。延べ人足 9191人。総欅材は、木おこりや割れ目がない。 鐘楼門も総欅材。延べ人足 1425人を要したという。庫裡は完成に3年間要した。5階建て合掌造りでは白川郷一だという。下坪面積が300平方メートルというから広い。
庫裡の炉端の焚き火がくゆす煙が、柱や梁、縄などを黒光のする光沢にしている。数百年かけた歴史ある煙の塗りは、寺の雰囲気を無常の世界へと誘う。
住職のご教示によれば、茅の調達が難しいという。里の茅は、茎の中が詰まっている。山にある茎が空洞の茅でなければすぐ痛む。昔は、結いの制度があり、毎年各家庭で茅を貯めてたが、それが近年難しくなったという。
茅葺き屋根の葺き替えも、2年毎に実施する戸数を決め修理している。しかし、茅不足や資金のことがあり、計画通りに茅葺き屋根更新ができないことが悩みだという。
白川郷には、国指定重要文化財の「和田家」などの合掌造りが沢山ある。建物の維持費が高額なことや生活様式が日々近代化する中、現状を維持することは困難を極める感じがする。このままでは、集落全体の保護は不安に思える。「いらぬ心配を」と言われそうだが、初めて見た昔の知恵がいっぱい詰まった世界遺産の集落は、国民みんなの財産に見えてしまった。
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