「民謡酒場」
昭和の時代、函館市内繁華街には「民謡酒場」が各所にあった。三味線と太鼓の音色に誘われ酒場に入ると、そこは義理と人情に溢れる社交場だった。畳の座敷に長テーブルと薄っぺらい座布団が定番。
民謡酒場に学歴は不必要。唄にあわせての「手拍子」、気に入った歌い手には「チップ」の大判振る舞い。飲み物は、なぜか「日本酒」が恰好よく見えた。
北洋漁業衰退や日常生活の変化が、民謡酒場を追い詰めた。函館市内で、「民謡酒場」と看板をあげている店は、指で折る数軒になった。しかし、民謡がかもしだす人情は、生活応援貢献という形で受け継がれている。
「江差追分会支部・函館声徳会」
昭和50年に発足した函館声徳会(前進・民謡同好会)は、会員60人を超える民謡大好き人間の集まりです。昨年12月には、30周年の記念式典を盛大に行っています。
会の活動目的は、「江差追分を始めとする民謡を研究し、あわせて会員相互の親睦を図り、地域社会に貢献をする」、となっています。
地域活動として、道南の老人ホーム、病院や施設の訪問。投げ銭チャリティーコンサート収益金の社会福祉寄付、チャリティーファミリィーコンサート収益金のアフリカ難民教育資金寄付など、活動の幅は広い。
「内村徳蔵・師匠」
函館声徳会が、30年以上の長きに亘り活動している原動力は、支部長・内村徳蔵さんの指導力の賜物です。会の活動には、いろいろな意見や雑音がでるのは当たり前のことです。これをうまく捌くのが上に立つ者の役目、とはいうものの簡単なことではないはずです。
師匠は函館水道局に勤める公務員。私も旧大野町水道課時代はお世話になりました。師匠は、地位や保身・肩書きを捨て、この声徳会を通しての社会貢献に命を賭けているように写りました。奥様の理解がなければできないことです。
「継続」、3〜5年ならできるかも知れません。30年を超える年数となれば、「辛い経験」もあり涙したこともあるのでは、と私は勝手に想像しています。「継続」させている手腕に、感服の一語です。
「チームワーク」
感心する継続の中に、会が発行している「民謡ふれあいだより」があります。昭和61年10月に第1号が発行され、現在73号まで続いています。
会のお世話になった人のこと、施設を訪問した様子など、内容盛りだくさんの記事は、目にする人に感動を与えます。
この会報から伝わってくることは、会を運営するみなさんのチームワークのよさです。みなさん高齢なのに、ボランティア活動のための唄や踊りの練習に励む姿、裏方でご苦労されてる事務局などなど、温かさいっぱいを感じさせてくれる。
施設慰安訪問の継続もすごい。湯川温泉に在る特別養護老人ホーム「清和荘」の訪問コンサートは、124回を超えたという。訪問するとなれば、「髪を整える」「着物を着る」「履物」などなど、難儀なことです。
「民謡で元気を出そう」
好きな民謡を勉強し、唄い、元気の源にする。さらに、磨いた唄や踊りを披露して喜んでもらう。自らの健康増進と社会貢献を兼ね備えた函館声徳会の活動は、高齢者社会の手本です。
内村師匠の好きな言葉は、「江差追分を一度聴いて惚れ、二度聴いて酔い、三度聴いて涙する」。唄は、「うまいへた」ではなく、「心」で唄うものなのですね。
喉を鍛えると肺が丈夫になり、風邪をひかなくなるとも言います。自分の喉をボランティア活動で披露すると聞く人に喜ばれます。
「うまいへた」は関係ないという「民謡」に、元気なうちに挑戦してみましょう。自らの健康維持のために。そして社会貢献活動を目指しましょうよ。
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