「度忘れ」
「物置に行ったが、何を取りにきたのか思い出せない」、「街中で知人に会った。顔は覚えているのだが、名前が思い出せない」、などなどの「度忘れ」が多くなってませんか。
「度忘れ」や「置き忘れ」は単なる「もの忘れ」、老化現象の影響による健忘症であり、認知症てはないという。安心してよいのかどうか不安になります。
「もの忘れ」が認知症でないということは、裏を返せば病気ではないということですが、脳の神経細胞減少が早く進めば「認知症」になることもあるという。やはり「もの忘れ」も油断禁物のようです。
「もうろく」
高齢になれば、言葉も出てこない場合があります。父は、「アレないか」、「ソレどうした」 ・・・ アレ・コレ・ソレなどが多くなり、母には、「アレと言っても何のことかわからない」、といつも注意されていた。
そして晩年は、「もうろく」たがった、といつも言われていた。「もうろく」という言葉、方言なのかどうかわかりませんが長寿者の老耄(ろうもう)のことだそうで、この辺りの高齢者はいまでも使う言葉です。
「危険信号」
知人の母親は高齢ながら元気・元気です。しかし、知人の話では悩みが出てきたという。「財布」が無くなったということで家庭内が大騒ぎになるという。これがひんぱんになってきたという。
父も母も晩年はそうだった。父は、「お金が自分ポケットに入っていない」、ということで私を叱った。買い物にいける状態でないのに。お金をポケットに入れてやると、「ニコッ」と笑顔を見せた。母は、知り合いが来ると、「そこに○千万円あるから持っていきなさい」というのが口癖だった。「どこにそんな大金あるの」と聞き返すと、「そこに置いてあるのが見えないのかい」と言い返した。
認知症を抱えている家庭の話を聞くと、「お金にまつわるもの忘れ」が多いように感じます。ものを盗られる妄想は、認知症の始まりですね。
「加山雄三さん・父の話をします」
新聞の広告に、加山雄三さんの「父の話をします」というのが掲載されました。
15年前の、ある日のことでした。私は父と一緒にレストランへ行きました。ある料理を食べた父は、これはとても美味しい、と喜んでいたので、一週間後、再び同じレストランに行き、同じメニューを注文しました。
すると父は言いました。「美味しい。こんな美味しい料理は初めて食べる」と。私は笑って言いました。何言ってんだよ親父。つい一週間前、ここで同じものを食べたじゃないか」。しかし、父は「いや、初めてだ」と最後まで言い張るのでした。「あれっ、おかしいぞ ・・・ 」と思い始めたのはその時でした。
私は妻と相談し、父を病院へ連れて行ってみることにしました。もちろんそれは簡単なことではありません。人一倍頑固で人一倍自尊心の強い父は、何を思い、何と言うだろうか。
親として、男として、人間としての尊厳を傷つけることなく、どうすれば納得してもらえるだろうか。いろいろ考えた挙句、私は父に、親父も年であちこちガタがきているだろうから一度(健康診断)を受けたらどうだろうか、と勧めてみることにした。
いよいよ父に切り出してみると、父は、わりとすんなり私の提案を受け入れてくれました。息子がそう言うなら ・・・ と思ったのでしょうか。あるいは、自分でも病院で診てもらうべきかなぁと、どこかで思っていたのかも知れません。それと、診てもらう先生が、よく行くかかりつけの先生であったことも、父の抵抗感を和らげていたのだと思います。
その時の診察の結果では、父は認知症でないことが判かりました。私も妻も、ひとまずホッとしました。しかし、結果がどうであれ、私はあの時父を病院へ連れてってよかったと思います。
それは、私が彼の息子として、息子だから言えること、できることのひとつを、彼にしてあげたのではないか、という思いがあったはずです。
「もの忘れ外来」
「電化製品の使い方がわからなくなった」「買い物に行っても計算ができなくなった」「靴を間違えてしまう」 ・・・ など「健忘症のもの忘れ」から「認知症の域」に入ったと思われる行動があったとしても、本人に言うことは勇気がいります。
加山雄三さんの話でもわかるように、親子であっても気遣いは必要です。また、認知症でも、アルツハイマー病やピック病など症状によって治療が異なると言います。
やはり、早期に正しい病名を見つけ、そして治療し、認知症の進行を遅らせることが大事です。このため、検診を受けやすくするため診療科に「もの忘れ外来」を設け、気軽に相談できる体制もできつつあります。
「要注意の認識を持つ」
認知症は老化現象のひとつ、と軽く考えてしまいがちです。私の親せきは、数件の病院受診の末にアルツハイマー病の正しい診断が下されました。病名をつきとめ正しい治療を受けた結果、進行が遅くなっています。
認知症は早期治療が効果ありのようです。お金にまつわる問題」が高齢者から発信されたら、「要注意」と思い、医師の診断を受けることが大事です。
「もの忘れ」に対する心構え、元気・元気なうちに考えましょう。自らのため、周りの知人友人のためにも。
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