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◎「果てしなき農業への夢とロマン」 少年の主張大会 小松直樹さん



  日本の農業は 「世襲制」 の意味あいが強いですね。私の近辺でも、長男がゆえに農家の跡取を余儀なくされたという話が結構あります。「おまえは長男、田んぼも・畑も・家屋敷も・山林も・・・・みんなお前のもの」 だから・・・・・・。跡を継いだことによって、「青春時代を棒にふったり」、「進学を断念したり」 などの負い目も。その時代は選択権がなく、「仕方がない」 「運が悪かった」 と思いつつ・・・・・。

  昨今は、農業後継の考え方・様変わりした感じがします。親自体が、半ば強制の不合理な跡目を経験し、「子どもだけには選択権を与えたい」 という感じのケースが増えましたね。

後継者自身が、親にハッキリもの申すことができるようになりましたね。「生き物は休日が無いから畑作に転換したい」 「ダイコンやニンジンなどの重量野菜をやめ、軽量野菜に」 「高設イチゴの栽培をしたい」 など条件を提示しての後継ぎ宣言は、時代に即応している。

  大野町少年の主張大会で大野農業高校3年 小松直樹さん が、後継ぎを自己判断で決断する様子を発表し、会場の共感を得ました。大野農業高校で学んでいることが、農業後継を決断することにつながったようです。改めて、農業教育の大切さを知らされました。


   「果てしなき農業への夢とロマン」  大野農業高校 園芸科3年  小松 直樹さん


  皆さんは農業という言葉を聞いてどんなイメージをもっているでしょうか。多分多くの人が 「辛い」 「休みがない」 「仕事がきつい」 などと言った、少し否定的なイメージを持つと思います。実は私自身も、農業はやりたくないものだと思っておりました。

でも、中学の時から時々家の仕事で農業を手伝いしたり、高校に入学してからの農業をとりまく色んなことを勉強し始めてからは、そういうイメージを持つことは良くないことだと少しづつ考えるようになりました。なぜかというと、今、日本の農業は大変危機的状況にあるということを知ったからです。

  まず第一に、農業をやめてしまう人が増えているということです。次に農業をやっている人の高齢化、後継者の減少などです。その他にも、中国の野菜の輸入などで痛手を被っています。もし、このようなことが進むと日本の農業はどうなってしまうのでしょうか。そうでなくても、日本の食料の自給率は40%もいっておりません。古来から瑞穂の国と言われていた日本がこのような状態にあるのです。

先日のイラクでの戦争のような国際紛争が日本近海で起き、会場が封鎖されると2〜3ケ月で食料危機が訪れる可能性が高いのです。そんなことを考えますと、日本は農業なしでは生きられない国になるのではないかと思います。ですから、農業の持つ意味は決して小さいものではありません。地球上の誰であっても、農業の世話にならないで生きることはできないのですから。

  今の世の中は、普通のサラリーマンで生きていくことが大変な時代になってきました。中国産の野菜やアメリカや東南アジア産の米のように、日本農業を脅かす物はないではありませんが、まだまだ真面目に一生懸命やって、工夫と汗を流すことをめんどうくさがらなければ、何とか生活していけるのです。

 今の日本では、努力に努力を重ねても・会社の倒産があったり、突然リストラにあったりすることがよくあります。それに比べると農業は、自分の力で何とかなる要素がたくさん残されていると思います。

 さて私の家ですが、ニンジンとカーネションを作っています。ニンジンはそれほどではありませんが、カーネションは21棟のハウスで通年栽培なので、農閑期の冬もあまり休みがありません。なぜなら、秋に定植した苗の管理、また、雪の多い年は除雪作業があるからです。

一番大変なのは天候の悪い時、ビニールハウス内での作業です。なにしろ気温が上がらないのでかなり辛いです。逆に夏は非常に暑いので、それはそれは大変なものがあります。私は休みの日に手伝いますが、汗があふれ出し逃げたくなる思いです。

また、カーネションは野菜と違い細かな作業が多いので、非常に手間がかかり、ハウス内での水管理、温度調節、病虫害の防除など、とても気を使います。狭いハウスの中の作業なので、機械に頼れる部分が少なくどうしても人間の労力が大きくなります。

こんな仕事を若い私がやるのは本当に辛いことです。こんなことをしなくても、飯が食えるのにと何回も思ったことがあります。ですから、かっての私は手伝いをしている最中に逃げ出したり、宿題を忘れていたといってさぼったこともありました。

しかし、大野農業高校に入学してからは、最後までやりとげることが多くなってきました。正直言いますと、今でも 「逃げたい」 「嫌だ」 「さぼろう」 と思うことがあります。でも、その時に思うのです。私の家は代々農業を営んで生活してきました。「大変だ」 「苦しい」 と言って、私の代でやめてしまうわけにはいかないのではと思うのです。私の家のビニールハウスには、先祖の方の汗がしみ込んでいるような気がするからです。そして無言のうちに、「頑張れ・頑張れ」 と言って後押しされているような気もするのです。

  さてこんな私ですが、旅することを趣味にしています。一人でぶらっと旅をするのが大好きです。これから、農作業のかたわら暇ができたら、各地で花を作っている人たちの所へ行って、共に汗を流す仲間として、未来を語り合いたいと考えています。

  今・日本経済の状態がますます厳しい状態になっています。この状態が続けば続くほど、人と人との交流が少なくなってしまいます。人と人との交流が少なくなると、人の心に隙間ができます。人は心に隙間ができればできるほど、心の潤うことを求めると思います。

その心の隙間を埋めるのが花だと思います。私はこの花の一本一本に、生産者の愛情が感じられるような花を作ってみたいと思っています。そして私の住んでいる七飯町を、花の町にしたいと思っています。北竜町のヒマワリ、鵡川町のタンポポのように、七飯と言ったらカーネションと言われるような町にしたいと考えています。

  花作りには夢があります。ロマンもあります。私一人では出来ないことがたくさんありますが、仲間を大勢つくって一つでも実現できれば、楽しいだろうと考えています。

どんなに辛くても・苦しくても・切なくても、この夢とロマンを心に秘めて、この大野農業高校で学んだ知識を基礎にして農業後継者としての自覚を持ち、明日の日本を支えていくのは農業だ、という誇りを持って頑張っていきたいと確信しています。

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