TOP   田舎都会通信  蕎麦酔夢「吉田村」  写真で語る   ブログ   リンク集

◎ボクシングに燃える息子よ ガンバレー



  子どもを育てることについては、それぞれさまざまな葛藤をしながらという人が多いのでは。予期しないことがつぎつぎやって来て「判断」に迷ってしまうこともありますよね。「親の夢 つぎつぎ消して 子は育つ」 というのが。この川柳・当を得ていますね。

  横浜市にある「高齢化社会をよくする虹の仲間」のみなさんは、「森を支えるかけがえのない一本・・・・・」に夢を託し、大野町の植樹に足を運び物心両面から協力・応援をしています。

  その仲間の一人に 清水福美 さんがいます。東神奈川高齢者ショートスティーセンター「若草」で働きながら、「息子の成長」 と 「植樹した木の成長」 に夢を託しての日々を送っています。その清水さんが、息子にかける思いを描いたエッセーをご紹介します。皆さんも自分の子育てと重ねながら読んでいただければと思います。




 「ボクシングに燃える息子よ、ガンバレー」  清水福美 2004・4・月刊誌「健康保険」から


  2002年度・ボクシング東日本新人王戦でチャンピオンになったとき、息子は言った。「ここまでは、努力で来たけれどこれからは才能だ・・・・」

  そして、2ケ月後、日本チャンピオンそして世界への登竜門といわれる新人王決勝戦のリングに息子は上がった。結果は惜しくも敗れた。初めて負けた息子を見たが、これまでの決勝戦で最高の試合と絶賛され、翌日のスポーツ紙の一面をかざった。

  息子が高校生になろうとしている春休みのある日のことだ。「おれ、ボクシングをやる」 聞いたとき 「えっ」 とわが耳を疑った。いろいろなスポーツがあるなかで、よりにもよってボクシングとは・・・・。静かな息子とボクシングは、間違っても結びつかなかった。

  ボクシングに対して、多くの友だちが、「えっ、あの殴り合いの野蛮なスポーツ?大丈夫?怖くない?よくやらせるわね、顔がわがむわよ・・・・・」 と言う。

  大学の試験日も、息子はジムに通っていた。プロテストに合格した時の喜びは、大学の合格通知よりも大きかったという。

  真夏の練習は、汗と暑さと熱気でジムの中はサウナ状態。そして試合前には減量と激しいスパーリングで尿さえあまり出なくなる。枯渇した砂漠状態の身体は、水分を欲しているが、それはそのまま体重になるから飲めないのだ。

「朝まで腹が減って寝られなかった・・・・」。試合の前は食事はもちろん、水分さえ制限して激しい練習をするので、瞬く間に身体が削られていく。その強靭な精神力にはわが子ながら見事というしかいいようがない。

母親としては「何でそこまで苦しいスポーツをやるのかしら・・・・」 と思いながらも、息子の試合は、アメリカでの試合を除いてすべて観戦している。手を握りながら、怖いけど息子をみつめ続ける緊張感。熱気とエネルギー渦巻く試合の研ぎ澄まされた時間は私の大好きな時間だ。


目次へ

TOP   田舎都会通信  蕎麦酔夢「吉田村」  写真で語る   ブログ   リンク集